がじゅまるのこと/はるな
 
物の名前はだいたいそらんじていた。でも、もう忘れてしまった。どんな花を咲かすのかも。あれらの植物は、いまのわたしの友人ではなくなってしまった。

小さながじゅまるを抱いて帰る道すがら、うれしいか?と聞かれ、うれしいと返す。お前はほんとうに植物が好きなんだな、と夫が言うのは、わたしがたびたび花を買って帰るところからだろう。いままでに鉢植えを買ってきたことは一度も無いということに、たぶん気づいていないのだ。
夫はわたしとくらべて健やかすぎる。わたしは彼のそういうところを愛しているけれど、同じぶんだけみじめになる。
夫は、根を張ることに疑問を抱かない植物だ。
そのうち、がじゅまるもこんな小さな陶器から植え替えてやらなければならないだろう。


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