カーペットのこと/はるな
友人からのながい電話を受けていると、耳もとで言葉がばら、ばら、と雑音のように崩れていく。夜。夫は仕事のあとに飲み会があると連絡をくれた。冷めてしまったスープ、かたくなったパン。きのうやっと出してきた、冬用のカーペットは毛足が長く、撫でると撫でたかたちに色の濃淡が変わる。
新しい職場はビルの20階にあって、窓からは、海と、ほかのビルと、線路が見える。夕暮れは立派だが、しかし、つよすぎる西日のためにカーテンが引かれ、座っている席から直接みることはできない。
となりの席には、おなじ立場で仕事をしている女の子がすわっていて、何か質問があると「いま大丈夫ですか?」と小首をかしげて聞いてくる。年上だけ
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