犬のこと/はるな
 

実家にはいま父と母が住んでいて、いまは、黒い子犬も住んでいる。
母が名付けた、「宝籤」という意味の名前を呼ぶと、尻尾と耳をすこしふって転げてくる。それも、この二週間でずい分としっかりした。
宝籤がうちへきて一週間経ったころに、わたしは彼女(女の子なのだ)にはじめて会った。そのときはまだほんの赤ん坊で、足はみじかくって、時おりだす鳴き声も、―鳴き声というよりも泣き声みたいな―、どちらかというと猫のような甲高いものだった。
ほんとうに、熊の子みたいになめらかに黒く、胸の真んなかだけが白い。それから、尻尾のほんの先に、数えられるほどわずかに白い毛がある。いつか抜け落ちてすべて黒くなってしまいそ
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