家のこと/はるな
 
父との思い出で思い出すのはいつもわたしと父とふたりで話ているところだ。
お雛さまは好きでも嫌いでもなかった。おそろしいと思ったことはない。甘酒はむかしから苦手で、雛あられはあれば食べるがとくべつにおいしいものだとも思わない。すこしほこりをかぶった箱を開け、がさがさしたうす紙をそうっとはずしてお雛さまを出す母の手つきはかなしかった。たぶんうらやましかったのだろう。

母の裁縫箱(それはふっくらした刺繍のされた布でできていて、開けると二段構えになっており、ふたに裏側には様々なはさみを収納する用のおさえがついていた)のうち側には、雛段のまえに座ったわたしたち姉妹のちいさな写真が貼ってあった。母の手
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