刺繍糸のこと/はるな
 
いまでもわたしはあの9月の川べりに座って、可愛いあのこと好きなものを言い合ってる。いいかんじに色あせたTシャツのプリント、外国のバンドのロゴが書いてある、ぼうぼうに伸びた雑草、東北のさばさばした風。でも、もう触れない。ここがそこじゃないってことを何よりの証拠にして、違う音が鳴る。
できるだけ正しいことを、考えていても、寝返りをうつだけでぼろぼろになってしまう。おまけにすべてはいくつか年をとって、壊れたりなくなったり、うまれたりした。爪は伸びるし(切って)、髪も伸びるし(切って)、わたしの手足はもうそれほど伸びないけれど、むすめは竹の子みたいにぐんぐん伸びていく。50円切手じゃ届かなくなった手紙、
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