旅のこと/はるな
旅をして、帰ってくれば花瓶はからから、ぐったりしたベランダの植物たちに、ごめんねごめんねと言いながら水やる。ぱんぱんの洗濯機がごとごといって回るなかで、冷蔵庫のなかで傷んだかなしい果物をどんどん捨てる。
娘はもうちゃらちゃら音のなるキーホルダーや、何の意味があるかわからない置き物を選ばない。ちょっと高いの、と遠慮がちに指さしたのは吹きガラスでつくられた透明のグラスで、よくみるとこまかいこまかい星くずの模様。大事につかいなさいね、と言ったわたしは、土地の名前がはいったへんてこな磁石を買う。
旅行の間じゅう、帰りたかった。
プールサイドでも、料理屋でも、海辺でも。
冷えた美術館で色
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