秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
 
 三

 玄関ホールで森野くんが友達数名と掲示板を見ていた。
 私に気付いた森野くんは「こんにちわ」と挨拶した。私はただ頭を下げた。2人はもう他人同士の関係になっていた。森野くんが私の性質を理解したのだろう。人が人と関わり合うときに卑俗な一歩を踏み出すその勇気がない臆病な性格に。
 「あの人と友達になるのはぜってー無理!」と、驚嘆と笑いを交えた調子で他の学生たちに流布してくれれば本望だ。
 いつものように草食系の昼食をとっていると私の前の席に誰か座った。嫌だな…と感じ箸を止めた。
 「秋山さん」
 女性の声だった。ギョッとして顔をあげると果たして彼女は栂尾祥子(とがのおしょうこ)さん
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