交錯詩 「お酒」 長谷川忍 鵜飼千代子/鵜飼千代子
 

新酒、古酒でない この黄金の酒は
気がつくと来ている
純米吟醸無濾過生なのだ



奇数行 鵜飼千代子
偶数行 長谷川忍


蛇の目に注ぎのぼる酒を見遣ると
時々は嬉しいこともあって
波立つおもてにやがて 習ったように同心円が現れる
それでお酒を呑む
甲斐甲斐しく取り分けられた肴を見つめ
いつの間にか
先を越されたとくすりと笑う
こっちに来ている
「どうぞ」と手を添え酒を酌む
日本酒でも
時計の針がゆっくり ゆっくりと 進んで行く
ウイスキーでも
とつとつと話をしながらだまりこむ
ズブロッカでもよい
思考のゆとりを持ちながら
なぜだか望んでは決して来られない
新酒、古酒でない この黄金の酒は
そんな不思議なこっち
純米吟醸無濾過生なのだ
気がつくと来ている



平成二十六年七月六日 鵜飼千代子







  グループ"連詩 交錯詩 他、共作 競作など"
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