連詩 「あづさゆみ」(百行) ベンジャミン 鵜飼千代子/鵜飼千代子
 
空を掃きすじ雲を残す
裸木の梢の枝が鳴る季節も
そろそろ終わる
どこまでも抜ける空が
やがて春霞めいてくる

弾けそうななにかの呟きが
聞こえてきそうな気がして
そろそろと吹く風に
そっと耳を澄ましてみても
街の声はいつも淋しい

くし歯が欠けたショッピングモールの
まばらな人通りは
数件先が隣の店の商人(あきびと)たちを
ステルスタイプの査定人に育てる
ほら

それでも大きくからだをそらせて
精一杯の気持ちで見上げるなら
そんな見えないものたちだけでなく
あなたはたしかに見るだろう
どこからか吹いてくる始まりの風を

乗せて行け
気の向く先へ

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