【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 
なかった。(一条「ポエムとyumica」全文)


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 シャワーを浴びて服を着ると、あたしは昇天した彼を家において外出した鈴子を追った。公園は真白く、どんぱちをしていた子供たちは雪合戦をしていた。半袖短パンの男子たちが鼻水をたらしながら女子たちを追いかけている。雪に濡れたシャツから透ける未発達の胸に興奮していたあたしは鈴子を追いかける為に教会とは反対の方角へ急いだ。

 鈴子は公園から少し離れた昔からあるお寺の階段のところであたしを待っていた。紐で両手を縛りつけられた女の人が鈴子の隣でぐったりしている。ここで拾ったのよ、と悪びれる様子もなくぐったりし
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   グループ"第4回批評祭参加作品"
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