【批評祭参加作品】失われた「鈴子」を求めて/香瀬
 
覆いかぶさるだけだ。私は左のポケットから三本目の前脚を取り出しそれを真ん中にして回転しながら、後ろに積み重ねられていく手掛かりに焦点を合わせ始めた。(一条「john」全文)


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 鴎は公園の空を飛び交っていたがついにわっかにつかまった祖父や祖母や祖父でも祖母でもないものたちを突き刺した。いっせいに破裂する夥しい数の水玉のパンツはいつのまにか公園を蔽い尽くしていて、攻勢と守勢を三度交代した暴力団の野球チームはタイムアウトをとって落ちてくるものを待った。

 ソーファーソーファーと歌いながら砂場の近くの家に入るとあたしと彼は誘拐されていた。身代金は「犯
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   グループ"第4回批評祭参加作品"
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