【批評祭参加作品】うたう者は疎外する/される/岡部淳太郎
 
差別になるから良くないと言われてもどうしようもないのだ。たとえば生まれつき身体に障害を抱えるとか不治の難病で苦しんでいるとかの場合、自らをマイノリティと見做すのを戒めるといったモラリスト的態度が通用しづらいのは明らかだろう。そのような眼に見える不利な特徴は本人にとっても周囲にとってもある種の刻印(スティグマ)として見られやすいから、よりいっそうマイノリティとしての心的実感をつくりやすい。たとえモラリスト的意見に接したとしても、本人にしてみれば何を悠長なことを言ってるんだと思ってしまうだろう。それほど極端な場合でなくても、マイノリティとしての心的実感の強固さはなかなかしつこいものであり、程度の違いこ
[次のページ]
   グループ"第4回批評祭参加作品"
   Point(3)