批評祭参加作品■「散文的な夏」 岡部淳太郎 /たりぽん(大理 奔)
私は冬が好きだ。周囲が生命にあふれるどんな季節よりも。雪深い雪原をトレースしていくとき、全ての冷たさの中で暖かい自分の体温を信じられる。吐く息に水蒸気が混じっているのが見える。大地の精気が星空に吸い込まれまいと戦っている音を感じる。一つ一つの命が大切に思える冬が好きだ。岡部淳太郎、その作品は季節にたとえると「夏」の匂いが濃いと感じる。むせかえる夏草の匂い。私が触れることのできた作品の多くにそれを感じる。突き進んでいこうとする季節の中で叫び、なき、いじけ、たじろいでいるように思える。私は夏は苦手だ。暑さや強い日差しもそうだけど、とにかく「よだきい」のだ。しかし、ここで季節の好き嫌いを戦わせる
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