批評祭参加作品■現代詩の記号論1/葉leaf
それでは、詩学の営為は意味のないこととして、詩学を排斥してしまってよいのだろうか。詩学屍体解剖説による詩学批判は、詩学を排斥してしまうほど強力なものなのだろうか。
まずC1を検討する。C1は、詩学は詩の情緒的作用をとらえることができないとして詩学を批判する。ここで、荒川洋治の「水駅」の次の箇所を引用する。
妻はしきりに河の名をきいた。肌のぬくみを引きわけて、わたしたちはすすむ。
ここで、この詩行を形式的に分析することを考える。「しきりに」「きいた」「ぬくみ」「わけて」「すすむ」といったひらがな表記によって、独特のやわらかさや多少の粘性を我々は感じる。ところで、やわらかさや粘性と
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