批評祭参加作品■怠惰な物差し ??あるいは違犯と視線について/岡部淳太郎
その違犯とは先ほど挙げた法に背くことだけに限らない。人より行動や思考が鈍かったり、何らかの病気に罹っていたり、背が低い醜い容姿をしている等の身体的特徴であったり、特異な趣味嗜好を持っていたりと、およそ人間が持ちうるありとあらゆる「個性」が挙げられる。言い換えれば人は誰でも違犯者になりうるのだ。卑近な例を挙げると、知能に優れた者が学者たちの中にいても目立たないが、普通の人々の中にいれば「あの人は学者さん」ということで自分たちとは違う存在として見られてしまう。その時々で属する場所によって、優性は容易に劣性に転化しうるのだ。社会の中に数多ある小さな共同体はそれぞれに社会全体の縮図であるから、その共同体の
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