批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
 
うに上麻生道路の砂けむりのなかに消
えてゆくのであった。

 この散文詩が詩集全体をしめくくっているのだが、ここにおいては犀の存在が圧倒的になっている。これを読むと、犀とはつまり、醜い心を持ちながらそれを自覚しようとしない、本当は弱い存在なのに徒党を組んで強く見せかけている、感性が鈍磨し自我だけが肥大した存在であるように見える。彼等は〈日常〉から外に一歩も踏み出ることがない。〈日常〉という狭い世界だけを世界のすべてであると思い、自我の命ずるままに疾走し振り返ることのない存在。「衆愚」という言葉によって言い表しうるような、人間のどうしようもなく醜い部分が拡大された存在
[次のページ]
   グループ"第3回批評祭参加作品"
   Point(1)