【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 

す。
 ハミルのおかあの頬っぺえはこれまた赤く、浮かれた顔をして上向きに顎を尖ら
せていますが、化粧もけっこう汗に流れているようです。ヒール附きの靴なんて普
段履かないからちょこんちょこんとつまずくのですが、誰も気に留めてくれないの
でハミルは見ていて恥ずかしくなりました。
 派手といえばハミルが物心のついたときから派手でしたが、普段ならあっぷりけ
のエプロンに安全ピンが山ほど留めてある、そういう妙ちきりんな派手なのです。
ハミルはそうしたおかあを恥じたことは一度もありませんでした。プラダのバッグ
なんて持っちゃって……。外套から見え隠れする鞄はハミルには信じられないアイ

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   グループ"フレージストのための音楽"
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