【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 

テムでした。
 ハミルがハミルの知らないおかあに仰天しているうちに、二人はきっぷ売り場に
やって来ました。そこでとうとうハミルのおかあは寄り添っていた肩を闘牛士から
ふっと離しました。間(あわい)に小動物が消え入りそうなくらいにふっと。一度
ぎゅっ、と手を繋いで、やがて二人は小さく手を振り合いました。外套から出たハ
ミルのおかあはひどく刺激的な服を着ていました。90年代初頭のボディコンで
す。そのハミルのおかあの目尻が光ったような気がしました。ハミルの心は仰天し
っ放しです。
 ハミルのおかあが間の抜けたように佇んでいるので、闘牛士を追ってみました。
「ハッ、ハアァ、」闘牛士は
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   グループ"フレージストのための音楽"
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