【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
士は余韻に浸れるほど呑気にはいかないのでした。すぐさ
ま駅から大通りに飛び出すと外套をはためかせ、暴れている牛どもを一匹ずつ倒さ
ねばならないのです。闘牛士がサーベルを抜きます。先刻はこんなやつら居なかっ
たじゃないか、ハミルは叫びます「負けるな、まけるな」。ハミルの声は恐らく届
かなかったでしょう。ですが闘牛士は目にも止まらぬ速さでこてんぱんに牛どもを
やっつけました。ハミルは拳を突き上げて喜びました。「エイ・ヤー!!」
駅構内に戻ると、ハミルのおかあはコインロッカーの前に居ました。すごすごと
プラダのバッグから皺々になった布きれを取り出して、そこに財布やらハンカチや
らを移し
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