【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 
零しました。帰ってこれな
い。ハミルはボール塔の灯の下を想像し始めました。

 そこはひとつの町のようでした。てらてらと金銀の光を浴びた、酔っ払いの呟き
やタクシー運転手の喫煙でごった返していることでしょう。「たにん」のことを
「ひとさま」と呼び、近づくまいとしているようです。そうした中にハミルのおか
あは駅の入り口をハミルの見知らぬ闘牛士と歩いています。
 血が染みても洗わなくて済むほどの真っ赤な布にハミルのおかあはくるみこまれ
ています。周囲を見渡したところ、ファッションというわけではなさそうですか
ら、やっぱり彼は闘牛士のようです。よくよく見ると腰にサーベルも差していま

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