【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
るような錯覚を感じたハミルはシャ
ツの袖で口許をごしごしと拭いました。よくあるごとですが、ハミルにはなかなか
馴染めません。色んな音に畳み掛けられているうちに背中が痒くなったり、もぞも
ぞしてみたり、くすりと笑ってみたりもしました。
「今日、来てよかったろう」ハミルの様子を見てムスカは満足そうに謂います。
「うん」ハミルは返答に困りました。ハミルは盗聴という行為に特別、関心を持て
ないでいるのです。頼まれるままに簡単なことをこなしているだけです。そりゃ、
こんな音を聴かされたら誰でもむずむずするってもんさ、そう思うばかりなので
す。
「え、なに?」
目を反らしたハミルは、シャ
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