【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 
。そういう光は目
に見えない速度を感じさせてくれたりします、車中に篭る音を残して。タ、タ、
タ、ン、……。小走りに駈けてきたハミルは、コンビニ袋を提げた手で、ミニ・ク
ーパーの窓をこつきました。
「買ってきたよ」ハミルはガラス越しにもたれかかっているムスカに呼びかける
と、返事を待たず運転席のあるほうへ廻り込んでいきます。ガッチャ。市道といい
ましたが民家に横附けされていたので、ドアは擦れないようにそっと開かれまし
た。飛び出した音はすこし胸に響くものでしたが、それは耳が敏感になっているせ
いなのだとハミルには分かっていました。
「聞いてくれよ、今行ったコンビニさ、レジの前に和菓
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   グループ"フレージストのための音楽"
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