【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
和菓子の棚、ないんだぜ」狭い
車内には、黒黒といかにも古めかしい大柄な器材が積み込まれていました。ハミル
は腰を窄めて席に着きます。さっそく買ってきたみたらし団子(3本入り)とアメ
リカン・コーラ2缶、TVガイドを膝の上に広げて、「まいっちゃったよ、
「え、なに?」ムスカは気のない返事をします。これは、この時刻のムスカの口
癖。やむなくハミルは括弧を、綴じました。
車内に封じられているこの心臓に突き刺さるような鳴動は、石原洋『パシヴィ
テ』。けしてムスカの愛すへき音楽というわけではありません。盗聴音のカモフラ
ージュに間に合ったという、それだけの附き合いです。
「火をくれよ、」
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