【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 

「さっき知ったばかりだ、闘牛士はね、こうやって牛を刺すんだ」ハミルはみたら
し団子の串を掴んでムスカの頚動脈を刺しました。
「え、なに?」刺されました、刺されました、刺されました、刺されました、刺さ
れました、刺されました。
「血ってさ、よく燃えるんだろうかね」ハミルはライターを点します。
「うまくいくじゃない」七つの穴から噴き出した血が照らされて虹のように見える
のでした。
 己から立ち上った虹をムスカはただただ見初めています。
 ハミルはこの虹をくぐった向こうの世界を想像し始めました。すると助手席側の
窓ガラスに映るハミルの人相。ハミルは首を振ります。
「ちがう、その果
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