【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
の果て!」力いっぱい込められた声でした。ハミルは向こうの世界を
飛びたいとして再び鳥になります。
そこはひとつの町のようでした。てらてらと……
ハミルはひとつひとつを辿っていきました、確かめました。だから、淋しくな
り、心細くなりました。ハミルの行き着ける場所がもうずっと、おんなしなのだと
知ってしまったのです。ハミルは窓を開けました。とてもやわらかな雨でした。
おかあの唄は二人の星を輝かせます、雲も越えて。
「今度、ヘッドフォンを買ってあげるよ」ハミルは謂いました。
「え、なに?」ムスカも窓を開けました。半身を芋虫のように乗り出したムスカは
深呼吸することそれきり、動かな
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