霧の様な死あるいはナルシシズムについて/立原道造を読む/渡邉建志
風呂に入ると誰もいなかった。照明が暗かった。暗いじゃないかT!と思ったが、照明を背に風呂の中で本を読み始めると、だんだん目も慣れてきて、きもちよく読めた。時々人が入ってきて、しばらくして出て行った。熱くなって苦しくなってくると水風呂に入った。水風呂から上がると体がぽかぽかしてとても気持ちよかった。村上春樹がエッセイか対談かで、自分の作家・翻訳家活動を、雨降る露天風呂に喩えていたことを思い出した。露天風呂で熱くなってきたころに、外に出て雨に打たれる。寒くなってくると温泉に入る。同じように、長編を書き、次に翻訳をし、次にまた長編を(あるいは短編を)書く。翻訳活動や短編を通して、何かを得たり何かを肥しに
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