未明、みえないまま/渡邉建志
 
きていた。いま手元に暗い色の薄い本があって、この本も私なんかの手元にあるべきではないような気がして、ずっと、持ち歩いているのだけれど、暗い表紙の向こうに、「誰?」と、明確な手触りのある声で呼んでいて、ほとんど見えないのだけれど、私にはそれが見えたり聞こえたりするような気がする。(その「誰」の呼び声が、私へではないような気がしている。)


わからない(それが、あの固有名詞たちのせいだったのか)(それらは、とてもえぐるような、ときにえぐみのある、何かのように思われた)(いまそれらは優しい声できこえる


「ポルカドット」
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