眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
を二回繰り返すことの意味が、減ってしまう。
この、単に同じ言葉を繰り返すということから生じるリズムは、なんだろうか。頭韻や脚韻と言ったものからはるかに遠い、衝動的な、本能的な、ただ、美しい言葉を繰り返し口にしたいという欲求が、須賀の筆を走らせる。須賀のヴィジョンを広げていく。2枚目に移ってから須賀は、まるで殺し文句みたいに、「いちもくさん」というひらがなに開いた言葉を、こどものように歌い、そしてまた、アマンテア、というお気に入りの地名を最後に置いて、句点で閉じる。リヴィアはいちもくさんに海へかけてゆく。とおく、句点みたいにちいさくなって。
須賀は、作家人生において、遠藤周作のようには、主と
[次のページ]
次 グループ"フレージストのための音楽"
編 削 Point(2)