眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
でもない、という、悪い言い方をすれば終わりのない自分探しのようにも思われる、果てしない苦しみの道行きを鳩にかさねている、そして神に、主に、「これで良いのでしょうか」と問うているような気がする。須賀のまわりには、だれひとり、(少なくとも日本人は)、須賀の生き方にYesを、Ouiを、Siをいってくれるひとはいなかったに違いない。いや。数少ない親友だけは…須賀が最後の作品『遠い朝の本たち』の、最初と最後の章を捧げた「しげちゃん」は、こう言った。「だいじょうぶよ、私はあなたを信頼してる。ちょっと、ふらふらしてて心配だけど、いずれはきっとうまくいくよ、なにもかも。」この全肯定を須賀は人生で何度も思い出した。
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