■批評祭参加作品■ アンファンス・フィニ/和泉 輪
思うが、私はこの約束を「少年と世界との関係を媒介するイノセンス」と解釈した。少年少女は彼ら特有のイノセンスを通じて世界と関係を持つ。そしてイノセンスは大人とは異なった彼らの「少年少女らしさ」を規定する。雪が降っても嬉しくなくなったとか、そんな些細なことで私たちは何らかの喪失感を抱き、そして少し哀しくなる。私たちはいったい何を失ったのか。「約束はみんな壊れたね。」とはまさにこの「イノセンスの喪失」を指しているのではないのだろうか。成長する過程で世界との関係は変化してゆく。そして世界も絶え間なく流動する。一行目「A→B B→C」の表現「鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。」がここで示唆的に残響している。
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