■批評祭参加作品■水在らあらあの「あるところ」/岡部淳太郎
顔を出して、本音を語っているように見える。ユートピア的な価値観の転倒と話者の切り替えがここでは同時に行なわれていて、それゆえにこの部分はいっそう強く読者の眼前に何かを訴えかけてくる。あるいは、第三連と同じくここは単に子供が話者になっているのかもしれないが、それでもこの話者の切り替えは実に効果的だ。私がこの詩でいちばん好きなのは、実はこの箇所なのだ。後につづく最終連の五行はふたたびスタート地点の物語を語り出す場所に戻っていて、そうした構成がいっそう直前の「怖いよ」と本音を語る部分を強く浮き彫りにしている。この本音の部分がなければ、この詩にはほとんど価値がないと言ってもいいくらいにこの部分は重要だと思
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