■批評祭参加作品■水在らあらあの「あるところ」/岡部淳太郎
 
ている。驚くのは、次の第十四連と第十五連だ。そこに至るまでの「あるところ」は、一種の理想的なユートピアのような調子で語られている。読者も心地よい波のような物語のリズムに乗って読むから、なおさらそのような印象を受ける。しかし、この二つの連で語られるあるところは、一種の「怖い」ところである。ユートピアが逆転して、非ユートピア的な属性が「あるところ」に与えられている。そして、この部分の話者はいったい誰なのかということも気になってくる。それまでの連では、第三連や第九連などの例外を除いて、物語は第三者のいわば神のような視点で語られている。ところが、この部分だけまるでそれまで隠れていた真の話者がひょっこり顔を
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   グループ"第2回批評祭参加作品"
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