■批評祭参加作品■ 「 無言の遺書 」 /服部 剛
は今でも、誰かの訃報を耳にする度にこの詩を想い出す。そし
て、世を去った人がまだ若く可能性のある人である場合、私達には
見えない空の上から、地上のあらゆる人生の物語を綴っている「姿
の無い作家」にその理由を問わずにいられないのである。
今年もまた一人、若き詩人が世を去った。しかもその知らせを聞
いたのは、彼が世を去ってから数ヵ月後のことであった。
私は彼とたった一度だけ会ったことがある。三年前の夏に大阪で
行われた朗読イベントに出演した時、彼も出演者の中の一人であっ
た。その時はまさか、彼が二年後にこの世を去るとは思ってもいな
かったので、挨拶程度しか交わさなかっ
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