■批評祭参加作品■ 「 無言の遺書 」  /服部 剛
 
をつきながら縁側まで歩き、日向に
腰を下ろしては昔のことを想い出すだろう。次に引用する私の詩は
五年前の夏に、まだ若い妻が亡くなったことを友人から聞いた翌日
に書いたものである。 


  道半ばで人生の線路を下車した者がいる
  発光する四つん這いの肉塊で
  闇へ伸びる線路を這い続ける者がいる
  点在する道しるべの灯に呼ばれるように

  小さき花等 笑い 揺れる 丘の上
  白いマリアの胸に抱かれた幼子の瞳をみつめ
  生の意味を問う若い頬を夜風は拭い

  見上げた空には
  蠍座のアンタレスが
  いつまでも 赤い光で 燃えていた 


 僕は今
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   グループ"第2回批評祭参加作品"
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