逢い引き/漣 風華
 
ねぇ静かに髪をといで
ゆっくりと口づけた

それだけの気紛れに
あたしは惚れたんだよ

貴方は誰かの男だって
知ってたわ
貴方の隣りは私じゃないって
知ってたの

駅で待ち合わせしたの
貴方との一つ一つの約束が
あたしの生きる希望だったの

ねぇ受話器の向こうの
静かな寝息に

うっとりと
聴き入っていたのよ、あたし

貴方が何処かに行くのが
怖かったわ
貴方が私を忘れるのが
怖かったの

貴方が作ってくれた
一度きりの手料理が
今は涙の味に思い出されます

金魚すくいの様に
取りこぼしたのは
何だったのかしら

最後はごめんなさい
あたしの気紛れで離れましょう
たった三日の貴方でした

   グループ"夜明け前の鬱屈"
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