昼下がりの静寂/漣 風華
蝉の鳴き声が静まる頃
ふと窓際から君の香りが
香った
赤色で部屋を染めたのは
君が好きな色だったから
あの海が恋しいのは
そこに君が居たから
きっと君を思い出したのは
薬がきれたせいだと
人の寂しさが君に集まり
君は赤色に染め上がる
覚え立ての台詞で
君を幾ら飾っても
届かない
届かない
きっと海が恋しいのは
それが原風景なのだろう
人は怖れるものだと
不安ながらも語り続けた夜がある
人は寂しいものだと
抱き合って泣き叫んだ夜がある
其れを笑って語れるかな
いつかを思い出した
蝉の声が静まる昼下がり
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