面接(3)/虹村 凌
 
 生ぬるい風が、ジャケットを抱えた脇の下を通っていく。ションベン横町と呼ばれる薄汚い通りの入り口にある喫茶店を出て、俺は人気の少ない方に歩き出した。咄嗟に良い場所が思いつかないが、とりあえず駅から離れれば、それなりに人気は少なくなるだろう。
 さっきとは違って、俺は彼女の前を歩き始めた。もういっそ、このまま消えていてくれないだろうか。全部嘘で、全部夢で、全部幻だったら良いんだ。そうだよ、こんな事がある訳が無い。俺は一人でお茶を飲んで、俺は一人で店を出た。二杯のんだから二杯分の請求だったんだ。そう思って、後ろを振り向くと、余所見しながら歩く彼女が、俺の真後ろに、いる。
 いた。帰りたい。眠い
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