八月/非在の虹
 
小さな部屋のなかで
きみもぼくも呼吸をしない
重く密度の濃い空気が
きみとぼくの屍体を葬る厚い土だ
ぼくたちはお互いを知らない
だれかが気まぐれに部屋をのぞくが
だれもいないと去ってゆく
いつか夜はぼくたちを黒い多面体にのせ
からだは斜面をすべってゆく
目を開けているが(きみも目を開けているだろう)
見ることをやめて聞こうとする
耳は何かを見ようとする
ぼくは眠りたいとは思っていないのだ
きっと
きみも
そうに違いないのだ
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