犬の名は全て一郎 (お暇な時にでも読んで下さい・・・)/ふるる
た。
「大切にしている?」
「ああ。時々水をやって、日にもちゃんと当てている。」
「お・・そろそろ年寄りは退散しようかの。」
盆栽の話になると、それまで黙って二人のやりとりを見守っていた昌造が急にそわそわして、庭に出た。犬たちも後に続く。それを見送って、華子はふっと何かを思い出したように笑った。
桜の花がほころんだようなその笑顔に思わず見とれていると、
「そういう、素直なところがいいの。一郎ちゃんは。昔とおんなじ。」
華子は真顔で言った。
終わりかけの梅の枝で、鶯がホーホケキョと鳴いた。
気恥ずかしくてそれ以上はいられずに、一郎は華子の屋敷を後にした。
「只今。」
「あら
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