小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
 
代のこと

デモがあろうとなかろうと
あたしは男物のジーンズで街をあるいた
ねえあたしたちは解放されてるのよ
こういうのがひとつの象徴なのよ
と あたしは特に思わなかったが

主義でもなんでもなくただ単純に
あたしはジーンズが好きだった

だからジーンズのウエストが日々きつくなっていったとき
あたしは非常に思い悩んだ
もうあたしはジーンズを履けないのだろうかと

生もうか生むまいかそんなこと全く悩まなかったけれど
ジーンズが履けないくらいにおなかが出るかと思うと
それだけはどうしようもなく悩ましかった
あたしはとにかくジーンズが好きだったのだ

でもあたしは
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