小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
もちろん本気だったんだよ娘よ今だってたぶん本気だ
あたしたちは常にめいっぱい本気だったのだ
だからあたしはおまえをみちこと名づけたのだけれど
おまえにはそんなことどうでもいいことかもしれない
[マルメロジャムをもう一瓶]
あたしを切り売りするように
あたしの時間は切り売りされ
うすぐらい工場であたしの手は
ひたすら箱を組み立てるためにうごいた
夜はFENを聴きながら
岩波文庫を読んだ
それだけがあたしの安上がりな教養で
でも本当は
小さな白い洋館で暮らす三人の少女の
笑いさざめくような物語が
[次のページ]
前 グループ"労働歌(ルクセンブルクの薔薇詩編)"
編 削 Point(18)