小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
 

もちろん本気だったんだよ娘よ今だってたぶん本気だ
あたしたちは常にめいっぱい本気だったのだ
だからあたしはおまえをみちこと名づけたのだけれど
おまえにはそんなことどうでもいいことかもしれない




[マルメロジャムをもう一瓶]


あたしを切り売りするように
あたしの時間は切り売りされ

うすぐらい工場であたしの手は
ひたすら箱を組み立てるためにうごいた

夜はFENを聴きながら
岩波文庫を読んだ
それだけがあたしの安上がりな教養で

でも本当は
小さな白い洋館で暮らす三人の少女の
笑いさざめくような物語が
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