小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
 
語がすきで
見たこともないマイセンのカップに憧れたり
ミルクパンでマルメロのジャムを煮て焦がしたり
ふろくのノートにつまらないポエムを書いたりして

革命の季節は感傷的に去り

シュプレヒコールをあげる亡霊たちは
未練がましくからっぽの伽藍を見つめていて

あの感傷と
この感傷と

どちらの流した血が多いか と
問うならばもちろん
毎月毎月血を流してきたこっちのほうが血まみれだが
そういう問題ではないようだから
大きな声で言うのはやめておこう

ともあれあたしはどうやら首にもならず
相変わらず工場で働き
マイセンのカップは買えないまでも
そのレプリカくら
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