小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
度ならず
でもまあそんな苦労話をしたいわけじゃない
問題は名前
あたしはけんめいに考えて考えて
あたしの子どもを名付けたのだ
それをあなたがたは
そんなにも簡単に名付けようというのか
この子には名前がある
あたしにも名前はある
それは神聖な名前ではないが
あたしたちには重要な名前だ
この子とあたしを再び望まぬ名で呼ぼうとするならば
あたしはあなたがたに爪を立てよう
猫でないとしても
もはや若くないとしても
あたしにはまだすこしばかりの爪があるのだ
[日曜日の鉄筆]
鉄筆でがりがり書かれた文字があった
丸字とも違う変体文字で
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