小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
 
らぎや憩いを生産する




[猫じゃないものたちの名前]


そんなにも簡単に
あなたがたは名付けうるというのか

猫に名前をつけるのだって
日曜の片手間仕事ではないと
歌った詩人もいたというのに

あの年の春
あたしのおなかには
父親のわからない子どもがいて
あの年の夏
あたしは望まぬ呼び名で呼ばれた

それでもあたしは猫ではなく人間で
もちろんあたしの子どもだって猫ではなかったから
ごはんにダシ粉をふりかけた猫まんまだけでは
どうしても生きてゆけなかったし
ましてTVの伝える街の火花なんか見ていても
ちっともおなかいっぱいにはならなかった
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