小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
 
だし
ファミレスで食事を運んでゆくのも
実際問題としてあたしたちだし
ファーストフード・ショップで0円のスマイルを売るのも
ほとんどの場合あたしたちだ

変化はあったがそれは革命ではなかった
支配を見えにくくしたに過ぎなかった


暖かさや安らぎや憩いが
誰かの指先から魔法のように生まれてくる と
いまだ信じている人がいる限り
この話は進まないし終わらないし
そういう人には理解しがたいかもしれないが
とりあえず結論を言うならば

あたしは夢みている
解放されたソウル・キッチンを夢みている
服従も支配もないそのソウル・キッチンで
男も女もてんでに暖かさや安らぎ
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  グループ"労働歌(ルクセンブルクの薔薇詩編)"
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