風のオマージュ その1/みつべえ
 
  ☆黒田三郎「逃亡者」の場合




 黒田三郎といえば詩集「ひとりの女に」(1954年刊)であるらしく、はやくも60年代のはじめには「戦後詩人の恋愛詩のなかで古典的な位置を占める」(大岡信)とまで言われました。たかだか10年で「古典的な位置」というのも、なんだかなあ(笑)ですが、それはそのまま戦後日本の恋愛詩の層の薄さを露呈した評言でもあったのでしょう。今日ますますその「古典的な位置」は定まって、詩集「小さなユリと」とともに彼の生涯の代表作とされています。
 しかし個人的に1番好きな作品をひとつだけ挙げるならば、そのいずれにも入ってない「逃亡者」(詩集「失われた墓碑銘」収録)です。
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