小豆鍋/木屋 亞万
両肩に光るタスキをぶら下げて工事現場を飛び出していけ
おやゆびをついっとつかいサンダルに前をむかせて走りだすきみ
香水の涼しい匂いを嗅ぎながら百貨店のベンチにて待つ
澱みつつ腐りゆくのに眼を染めて休みを過ごす死んだ目をして
俺が見る聴く考えるものだけが世界のすべて刺せよ激しく
紙よりも薄っぺらくてわたくしが吐く言葉なぞ吹けば散らばる
逃げられぬ逃れられぬと身をよじる眠る頭の中に縛られ
冷静が幻想の芽をむしり取る風の強い日何もない空
人間でいることにもう飽きてきた私はいつも私なのです
鳴り止まぬ土下座コールの只中で酒をぶちまけ火を放つのだ
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