マル/アンテ
 

大きなマルが描きたかった
テーブルには収まらず
床のうえにはうまく描けず
壁は論外で
仕方なく庭に出た
引き潮で乾いた土のうえに
棒で線を引いていくと
小石にぶつかるたび歪むので
取り除いて土をならし
慎重に線をつづけた
時間はずいぶんかかったけれど
満足のいくマルが描けたので
高いところから眺めてみたくて
物置小屋から梯子を出した
屋根に登ろうともたもたしているうち
引き潮が終わり
海水が庭に流れ込んできて
マルはすっかりかき消されてしまった
いったいなにをやっているんだろう
空をうめた雲を見ていると
涙がこみあげてきて
そうだ屋根にマルを描けばよか
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