マル/
アンテ
よかったんだ
思ったとたん
大粒の雨が落ちてきて
ずぶ濡れになった
あわてて家のなかに逃げ込んで
縁側で髪や服を乾かすあいだ
海水のうえで雨粒がはじける音が
ひっきりなしに続いていた
垣根のむこう側
たくさんの縦の線にまぎれて
柿の木の枝が静かに揺れていた
間違っていることくらい
わかっている
声にだして言ってみた
それでもマルを描きたかった
それだけなのに
すると突然
雨の音が変わった
もう
潮の香りはしなかった
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