涙/アンテ
4 涙
あたしの名前を告げた
相手は
品のない言葉を何度も何度も
うれしそうに並べ立て
思い出したように奇妙な息遣いで笑い
かと思うととつぜん怒りだして
不意に回線を切った
洗濯物をたたむ作業にもどる
靴下がひとつ
片方だけあまる
たしか昨日もひとつだけ足りなかった
比べてみると
別物だった
一度も泣いたことがない理由
をよく考える
あたしのなかの異物
を捨てることに懸命だった
何度も吐いて
気持ちを童話や詩にして
成美を産んで
いろんな人の記憶を捨てて
そうして綺麗さっぱり
なくして
あたしは
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